
血尿
血尿(けつにょう)とは、その名の通り尿の中に血液が混じった状態を指します。
トイレで排尿した際、尿の色が赤かったりピンク色に見えて驚いた経験はないでしょうか。尿に血が混じっているのを目で確認できる場合、それは肉眼的血尿と呼ばれます。
一方、見た目には正常な尿でも尿検査ではじめて血液(赤血球)の混入が分かる場合もあり、これを顕微鏡的血尿といいます。肉眼的血尿は自分でも気づくことができますが、顕微鏡的血尿は健康診断の尿検査などで指摘されるまで気づかないことが多く、知らないうちに病気が進行してしまうケースもあります。
いずれのタイプの血尿も、腎臓や尿路(尿が通る通り道)のどこかに異常が起きているサインかもしれません。血尿を見つけたら決して放置せず、できるだけ早めに泌尿器科など専門の医療機関を受診しましょう。
血尿の主な原因
- 尿路感染症(膀胱炎・腎盂腎炎など)
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細菌が尿道から膀胱や腎臓に侵入して炎症を起こすと、尿の通り道の粘膜が傷つき出血することで血尿が現れることがあります。特に女性に多い膀胱炎では、血尿のほか「排尿時の痛み」「頻尿(トイレが近い)」「尿のにごり」などの症状を伴うのが一般的です。感染が腎臓にまで及ぶ腎盂腎炎(じんうじんえん)になると、背中の痛みや高熱が出ることもあります。
- 尿路結石
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腎臓や尿管の結石(石)が粘膜を傷つけて出血し、血尿の原因になることがあります。典型的には激しい横腹の痛み(疝痛発作)を伴いますが、小さな結石では痛みがなく血尿が最初のサインになる場合もあります。近年は食生活の変化もあり、日本人の約10人に1人が一生のうちに尿路結石を経験すると言われるほど身近な病気です。
- 尿路の腫瘍(がん)
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腎臓・尿管・膀胱など尿路にできる腫瘍(良性・悪性)も血尿の重要な原因の一つです。腫瘍からの出血により尿に血が混じります。初期の腫瘍は自覚症状が出にくく、血尿が唯一のサインとなることが多いため見逃しに注意が必要です。実際、膀胱がん患者さんの約85%は血尿がきっかけで発見されています。特に痛みを伴わない血尿は膀胱がん・腎臓がんなど悪性腫瘍の可能性を示唆するため要注意です。
- 前立腺肥大症(男性の場合)
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男性の前立腺肥大症でも血尿が出ることがあります。
前立腺はもともと血管が豊富な臓器で、肥大した前立腺では排尿時の圧力で血管が破れて出血し、尿に血が混じることがあるのです。前立腺肥大症は中高年男性に多く、男性の血尿原因として比較的よく見られる疾患です。前立腺肥大症では排尿困難(尿が出にくい)、残尿感、頻尿などの症状も現れやすいですが、それに加えて血尿が起こる場合があります。
- 腎臓の病気
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腎臓そのものの疾患によって血尿が起こることもあります。
代表的なのは糸球体腎炎(腎臓のフィルター部分の炎症)やIgA腎症などで、慢性的な腎臓病の一部では尿に血が混じる場合があります。このような腎臓病では尿中のタンパクが増える(蛋白尿)ケースも多く、血尿と蛋白尿がともに見られるときは腎機能の低下が進行している可能性があります。精密検査と継続的な経過観察が必要になるため、早めに専門医を受診しましょう。
血尿を放置することのリスク
血尿は決して「様子見」してよい症状ではありません。
原因が何であれ、放置すると深刻な事態を招くリスクがあります。
例えば膀胱炎などの尿路感染症による血尿を放置すれば、細菌が腎臓まで達して高熱の出る腎盂腎炎に進行する恐れがあります。尿路結石の場合も、結石を長く放置すれば尿路の閉塞や腎機能障害を引き起こす可能性があります。
さらに怖いのは、膀胱がんなど重大な病気のサインである血尿を見逃してしまうことです。膀胱がんの血尿は痛みなど他の症状を伴わず一度出ただけで自然に止まってしまうこともあり、そのため「治ったかな?」と受診せずにいると発見が遅れてしまうケースが実際に少なくありません。
肉眼的血尿は一時的に治まっても原因が消失したわけではないので、安心せず必ず検査が必要です。特に喫煙歴がある方や50歳以上の方は尿路の悪性腫瘍が潜んでいるリスクが高く、血尿を認めたら早急に泌尿器科専門医を受診してください。
痛みがない血尿は要注意です
「血尿=痛みを伴うもの」と思われがちですが、痛みのない血尿ほど注意です。
排尿時の痛みや腰痛など何らかの症状を伴う血尿は、膀胱炎や尿路結石など比較的良性の原因であることが多い一方で、痛みなど自覚症状がない血尿の方が膀胱がんなど悪性疾患が潜んでいる可能性が高いとされています。
実際、腎がん・膀胱がん・尿管がんといった泌尿器科の多くの癌は、無症候性(症状のない)血尿をきっかけに発見されることが少なくありません。痛みがない分だけ発見が遅れがちで、「気付いたときには病気が進行していた…」という事態になりかねない点で「痛みがない血尿の方が怖い」とも言われるゆえんです。たとえ出血が一時的に治まっても油断せず、速やかに検査を受けるようにしましょう。
当院で実施可能な検査
膀胱鏡(ぼうこうきょう)検査
膀胱鏡検査は、細いカメラを尿道から挿入して、膀胱の中を直接観察する検査です。
血尿の原因となる膀胱がんやポリープ、炎症、結石などを目で見て確認できるのが大きな特徴です。
検査の際は、尿道に麻酔薬入りのゼリーを入れてから行いますので、多くの方は「少し違和感がある」「おしっこがしたい感じがする」程度で済みます。検査時間は数分程度で、終わったあとはそのまま歩いてお帰りいただけます(まれに一時的な血尿やしみる感じが出ることがあります)。
血尿の原因をしっかり調べるうえで、とても大切な検査です。「こわい検査」というイメージがあるかもしれませんが、できるだけ痛みや不安が少なくなるよう配慮しながら行いますので、ご不明な点は遠慮なくおたずねください。
尿細胞診(にょうさいぼうしん)
尿細胞診は、尿の中にがん細胞が紛れ込んでいないかを調べる検査です。
採尿した尿を顕微鏡で詳しく観察し、膀胱がんなどの悪性の細胞がないかを病理医が確認します。
検査方法は、ふだん通り尿を採っていただくだけで、痛みや負担はほとんどありません。特に、膀胱がんの中でも進行しやすいタイプのがんを見つけるのに役立つ検査です。ただし、ごく早い段階の病変では尿に細胞が出てこないこともあるため、膀胱鏡検査などと組み合わせて診断していきます。
「血尿はあるけれど、がんかどうかが心配」という方にとって、尿細胞診は安心材料にもなる大切な検査です。結果の見方や必要なフォローについては、医師から分かりやすくご説明いたします。
よくある質問
当院へご相談ください
繰り返しになりますが、血尿を見たら放置せず早めに専門医を受診することが何より大切です。
原因にもよりますが、血尿の原因となる病気は早期発見・早期治療すれば回復可能なものが多くあります。不安に感じるかもしれませんが、裏を返せば血尿というサインを見逃さず早期に対処すれば怖がりすぎる必要はありません。実際、早い段階で見つけて適切な治療を行えば、身体への負担が少ない治療で済むケースも多いのです。
「血尿かも?」とお感じになった方は、お早めに当院までご相談ください。
