
前立腺肥大症
中高年男性は要注意!身近な排尿トラブル
中高年男性の皆さん、おしっこの悩みを「年のせい」とあきらめていませんか?
前立腺肥大症は50代以上の男性によくみられる良性の病気で、日本では約108万人もの患者がいると推計されています。潜在患者数は400万人以上ともいわれ、55歳以上の男性の5人に1人は該当すると推定されます。加齢とともに増えるこの病気は決して珍しくなく、多くの男性が直面する可能性があります。
前立腺肥大症そのものは命に関わる病気ではなく「良性」の増殖ですが、放置すれば排尿障害による生活の質(QOL)の低下や合併症を招くことがあります。夜間何度もトイレに起きたり、思うように排尿できない状態が続けば、ご本人はもちろん一緒に暮らすご家族にも負担となり得ます。
前立腺とその役割
前立腺は男性にのみ存在する臓器で、膀胱のすぐ下、尿道の周囲にあります。小さな栗(くるみ)ほどの大きさ(約20mL)が正常とされ、射精時の精液の一部(前立腺液)を分泌する役割を担っています。
この前立腺は年齢とともに少しずつ大きくなることが知られており、加齢によるホルモンバランスの変化が関与しています。中高年になると前立腺の組織が増殖しやすくなり、多くの男性で前立腺が肥大してきます。

前立腺の肥大自体は必ずしも異常ではありません。例えば50代の男性の約50%、80代では80〜90%の男性に前立腺の肥大が見られるとの報告があります。
しかし、重要なのは「前立腺肥大症」と診断される状態です。前立腺が大きくなることで尿道を圧迫し、排尿障害などの症状を引き起こしている場合に「前立腺肥大症」と呼びます。つまり、単に前立腺が大きいだけでは問題ありませんが、尿の出に影響が出ている場合は治療を検討すべき病的な状態と言えます。
前立腺肥大症とは?
前立腺肥大症とは、前立腺の良性の増殖(過形成)によって尿道や膀胱出口が狭くなり、排尿に関する症状(下部尿路症状)を引き起こす疾患です。
良性腫瘍の一種であり前立腺がんではありません。発生部位も異なり、前立腺肥大症は前立腺の内側(尿道周囲の内腺)が大きくなるのに対し、前立腺がんは外側の組織に発生します。したがって前立腺肥大症が前立腺がんに進行することはなく、性質の異なる病気ですのでご安心ください。
好発年齢は50代以降の中高年男性です。加齢が最大のリスク因子で、年齢とともに前立腺肥大症になる人の割合は増加します。上述のように50代で約半数、80代では8〜9割の男性に前立腺の肥大がみられますが、実際に排尿障害など症状が出るのはその一部です。
ある調査では、前立腺が肥大している人のうち症状があって治療を要するのは約4人に1人程度とされています。つまり、前立腺肥大症は中高年男性に非常に多い病気ですが、症状の程度は個人差が大きく、軽い場合は気付かれないこともあります。
とはいえ、症状がない場合でも定期的な経過観察は重要です。肥大が進行するといずれ症状が現れたり、後述する合併症の危険が高まる可能性があるためです。年齢を重ねれば誰でも起こり得る身近な病気だからこそ、正しく理解し早めに対処することが大切です。
主な症状とセルフチェック
- 尿勢低下(尿の勢いが弱い)
- 排尿開始遅延(尿が出始めるまで時間がかかる)
- 尿線途絶(排尿の途中で尿が途切れる)
- 頻尿(トイレが近い)
- 夜間頻尿
- 尿意切迫感(強い尿意)
- 残尿感
- 腹圧排尿
これらの症状は前立腺肥大症以外の疾患(例えば過活動膀胱や前立腺炎など)でも起こり得ますが、複数当てはまる場合は前立腺肥大症の可能性が高いです。セルフチェックとして、以下のような点を確認してみましょう。
- 最近、排尿の勢いが弱くなったと感じるか?
- トイレが近くなったり、夜中に排尿のため起きる回数が増えていないか?
- 排尿に時間がかかったり、途中で途切れたりしていないか?
- 排尿後に残尿感があるか?または尿滴下(排尿後にポタポタ漏れること)があるか?
- 急に強い尿意を感じ、トイレまで我慢できないことがあるか?
こうした症状が日常生活で気になり始めたら、一度泌尿器科で相談することをおすすめします。症状の程度は自己判断しづらいため、医療機関では国際前立腺症状スコア(IPSS)などの質問票で客観的に評価することもあります。まずはご自身の排尿状態を振り返り、少しでも異変を感じたら早めに専門医に診てもらいましょう。
放置するリスク
症状が軽いからといって前立腺肥大症を放置することはおすすめできません。前立腺肥大症は基本的に進行性の病気であり、適切に対処しないまま長年放っておくと次第に肥大が進み、以下のような深刻なリスクや合併症を招く恐れがあります。
- 膀胱機能の低下(膀胱の肥大・変形)
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常に膀胱に尿が残る状態が続くと、膀胱の筋肉が過度に緊張し厚く硬くなってしまいます。膀胱自体の収縮力が低下し、さらに排尿しづらくなるという悪循環に陥ります。
- 腎機能障害
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膀胱に排出しきれない尿が溜まり続けると、尿が腎臓へ逆流(尿路閉塞)して腎臓に負担をかけます。その結果、腎不全を起こすこともあり、最悪の場合は人工透析が必要になるケースも報告されています。
- 急性尿閉(おしっこの詰まり)
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前立腺がさらに肥大し急に尿道が塞がってしまうと、突然まったく尿が出なくなることがあります。これを急性尿閉といい、下腹部の激しい痛みを伴う緊急事態です。尿閉になるとカテーテル(管)で尿を排出する処置が必要で、放置すれば腎不全や膀胱破裂につながる危険があります。
- 尿路感染症(反復する膀胱炎など)
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残尿が多い状態では細菌が繁殖しやすく、慢性的な膀胱炎や腎盂腎炎を繰り返すことがあります。高齢男性の尿路感染は重症化すると敗血症のリスクもあるため注意が必要です。
- 膀胱結石・膀胱憩室
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膀胱に残った尿中のミネラルが結晶化し結石ができることがあります。また強い残尿圧で膀胱壁が一部風船状に膨らみ憩室ができる場合もあります。結石は感染症や膀胱粘膜障害の原因になり、憩室ができると余計に尿が溜まりやすくなるなど悪影響があります。
このように、前立腺肥大症を治療せず放っておくと様々な二次的トラブルが起こり得ます。幸い、前立腺肥大症による膀胱機能や腎機能の変化は適切な時期に治療すれば元の状態に戻る可能性があります。症状が軽いうちから定期的に検査・経過観察を受け、悪化する前に対処することが肝心です。
よくある質問
当院の対応
当院では、前立腺肥大症の検査・治療を幅広くサポートしています。症状の相談から各種検査まで、まずは当院でお気軽にご相談ください。
- 院内で完結できる検査体制
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問診・尿検査・超音波検査はもちろん、膀胱鏡検査も当院で実施可能です。柔軟な軟性内視鏡を用いて痛みの少ない膀胱鏡検査を行っており、必要な場合はその場で膀胱内や前立腺の状態を詳しく観察できます。「検査は痛そうで不安…」という方もご安心ください。当院の泌尿器科専門医が豊富な経験に基づき、できるだけ負担の少ない検査を心がけています
- 段階に応じた適切な治療
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生活指導やお薬による内科的治療は当院で継続して行えます。定期的に症状の経過を伺いながら、処方内容を調整していきます。もし手術が必要と判断されるケースでは、無理に当院で引き留めるようなことはせず、速やかに信頼できる連携先の専門病院をご紹介いたします。例えば、経尿道的前立腺切除術(TUR-P)やHoLEPなど高度な手術治療が必要な際には、実績ある泌尿器科病院と連携して万全の体制で治療を受けていただけるよう手配いたします。紹介後も必要に応じて当院で術前術後のフォローや相談を承りますのでご安心ください。
- 通いやすさへの配慮
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当院は岩槻駅から徒歩3分の場所にあり、お仕事帰りやご高齢の方にも通院しやすい環境です。土曜診療も行っております。院内はバリアフリー対応で、お手洗いや待合室も快適にご利用いただけます。「泌尿器科はなんとなく行きづらい…」という方も、どうぞ安心してお越しください。当院ではプライバシーにも十分配慮し、デリケートなお悩みを親身に伺います。
前立腺肥大症は中高年の男性にとってごく身近な病気ですが、適切な時期に治療すれば元の状態に戻せる可能性が高い疾患です。加齢による避けられない変化ではありますが、現代の治療法(お薬・手術)は飛躍的に進歩しており、多くの場合は治療によって以前と変わらない快適な生活を取り戻すことができます。排尿の悩みはデリケートなため放置してしまう方も少なくありませんが、症状が進行する前に対処することが何より重要です。
「歳のせいだから仕方ない」と我慢する必要はありません。少しでも「おかしいな」と感じたら、ぜひ早めに泌尿器科を受診し専門医の診断を受けてください。当院でも前立腺肥大症に関するご相談・検査を随時承っております。丁寧な説明と患者さま一人ひとりに合った治療プランで、不安の解消に努めます。
前立腺肥大症は適切に向き合えば怖くありません。排尿トラブルを抱える中高年男性とそのご家族の方々が安心して過ごせるよう、早期発見・治療を心よりおすすめいたします。お困りの際はお気軽に当院にご相談ください。
