おねしょ外来(夜尿症)

おねしょ外来(夜尿症)

夜尿症とは？おねしょとの違い

「おねしょ」とは夜間睡眠中に無意識におしっこをしてしまうことを指し、乳幼児ではよくあることです。

一般的に4歳頃までは発達の一環としておねしょが見られます。しかし5歳を過ぎても月に1回以上の頻度で夜間の寝尿（おねしょ）が3ヶ月以上続く場合、それは医療的に「夜尿症」と診断されます。簡単に言えば、小学校入学前後の年齢（目安として5～6歳）になってもおねしょが続く状態が夜尿症です。

夜尿症は決して珍しいものではありません。例えば5～6歳のお子さんのおよそ15％は夜尿症がみられ、7歳でも約10％の子どもに夜尿症があると報告されています。

小学生になってもクラスに数人程度は同じ悩みを抱えるお子さんがいる計算です。男の子に多く見られる傾向があり、ご両親のいずれかが子どもの頃おねしょをしていた場合はお子さんにも夜尿症がみられる率がやや高いことがわかっています。

おねしょは決してお子さんの怠慢や親御さんのしつけ不足が原因ではありません。

幼いお子さんのおねしょはごく自然な発達過程で、多くの場合、性格や育て方は関係ありません。焦ったり叱ったりして解決できる問題ではなく、徐々に身体の発達とともに改善していくものですので、どうか自分を責めないでください。

夜尿症の主な原因

膀胱機能の未熟さ（小さい膀胱容量）

お子さんの膀胱がまだ十分に発達しておらず、夜間に作られる尿の量をためきれない場合があります。膀胱容量が小さいために少し尿が溜まっただけでもいっぱいになってしまい、寝ている間に我慢しきれず排尿してしまうのです。また膀胱が過敏に反応してしまい、容量が十分でなくても収縮して尿を出してしまう（過活動膀胱）状態も原因となりえます。

抗利尿ホルモンの分泌不足（夜間多尿）

通常、夜間は「抗利尿ホルモン（バソプレシン）」が多く分泌されて尿量を抑えます。しかし夜尿症のお子さんでは、このホルモンの夜間分泌リズムが未成熟なため、睡眠中も昼間と同程度の多くの尿が作られてしまいます。夜間の尿量が多い（夜間多尿）ことで膀胱が容量オーバーになり、おねしょにつながります。

深い眠り（睡眠中の覚醒障害）

夜尿症のお子さんは総じて眠りが深く、膀胱から「おしっこがたまったよ」という信号が脳に伝わっても目を覚ましにくい傾向があります。通常であれば尿意で目が覚めてトイレに行けるところ、深い睡眠により脳が反応しにくく尿意を感じられずに寝たまま排尿してしまうのです。これは本人の意思とは関係なく、生理的な覚醒反応の未発達によるものです。

心理的な要因・生活環境の変化

基本的に夜尿症は身体的な発達要因で起こりますが、ストレスや環境の変化がきっかけで一時的におねしょの頻度が増えることもあります。例えば進級・引っ越し・兄弟の誕生など生活上の変化や不安が影響し、一過性に夜尿がみられるケースです。ただし、「心理的な問題があるからおねしょをする」というわけではなく、あくまで一因であり、長引く場合は他の身体的要因が関与していることがほとんどです。

以上のように、夜尿症は膀胱の発達遅れ・夜間の尿量調節ホルモンの未熟さ・深い睡眠といった複数の要因が重なって起こると考えられています。遺伝的な影響も指摘され、親御さんも子どもの頃おねしょが長引いた場合、お子さんも夜尿症を経験しやすい傾向があります。

夜尿症を放置することのリスク

「そのうち治るだろう」と夜尿症を放置してしまうと、お子さんやご家族に次のような影響が出る可能性があります。

お子さんの自己肯定感の低下

成長とともに本人がおねしょを恥ずかしく感じ、自信を失ってしまうことがあります。特に周りの友達がお泊まり会や合宿に行く年齢になると、「自分だけできない」とストレスを感じたり、劣等感を抱いてしまう子もいます。おねしょが原因でお泊まりを諦めたり、常に不安を抱えて生活することは、お子さんの心の発達にマイナスとなりえます。

親子関係への影響・生活面の負担

毎日の寝具の洗濯やシーツ交換など、保護者の方にとっても夜尿は負担になります。つい「またおねしょしたの？」と叱りたくなったり、イライラしてしまうこともあるでしょう。しかし叱られてしまうと子どもはさらに落ち込み、親御さんに言えず一人で抱え込んでしまうこともあります。このようにお互いが追い詰められることで親子関係がぎくしゃくしてしまう懸念もあります。実際に、夜尿症の子どもは自己嫌悪や劣等感を持ち、親御さんも将来への不安からストレスを抱えるケースが報告されています。

もちろん夜尿症は成長とともに多くの場合改善しますが、頻度が高い場合やお子さん・保護者が悩んでいる場合には、早めに治療に取り組むことをおすすめします。適切な治療によって、お子さん自身が「おねしょを克服できた！」という自信を取り戻し、親子の不安も軽くなるというメリットがあります。

よくある質問

夜尿症はそのままにしていても自然に治るものなのでしょうか？

個人差はありますが、夜尿症は成長とともに改善しやすい傾向があります。

実際、7歳のお子さんの約10％が夜尿症と言われますが、その後は毎年15％程度の割合で自然に治っていき、成人までにはほぼ全例が改善すると考えられています。

夜尿症の原因は心理的な問題や親のしつけ不足なのでしょうか？

いいえ、夜尿症の主な原因は前述のとおり膀胱機能やホルモン分泌、睡眠の深さなど身体的・生理的な要因です。決してお子さんの性格や親御さんのしつけのせいではありません。

治療を始めると、どのくらいの期間で治りますか？

夜尿症の治療効果が出るまでの期間はお子さんによって様々ですが、比較的短期間で改善するケースも多いです。ある報告では、治療開始から半年以内に約80％のお子さんで夜尿の症状が軽減したというデータがあります。早い子では数週間でおねしょの回数が減ったり、連続して乾いた夜が続くようになることもあります。

ご相談ください

夜尿症（おねしょ）の治療をご検討中の保護者の方へ、当院のおねしょ外来はお子さんの健やかな成長と笑顔のために全力でサポートいたします。

「うちの子だけじゃないかな…」と不安に思っている保護者の方も、どうぞお気軽にご相談ください。