
腰・わき腹の激痛
腰や脇腹の激痛は、泌尿器科の分野では主に尿路結石(腎結石・尿管結石)によって起こることが多い症状です。
尿路結石は中高年の男性に多く、生涯で男性の約7人に1人が経験するとされています。痛みが非常に強いため、救急車で搬送される方もいるほどです。
症状の特徴(どんな痛み?)
尿路結石の痛みは、突然襲ってくるのが特徴です。
左右どちらか一方の背中から脇腹にかけて耐え難い激痛が走り、痛みは波を打つように強まったり弱まったりを繰り返します(疝痛発作)。あまりの痛みにじっとしていられないことも多く、吐き気や嘔吐、冷や汗を伴う場合もあります。
結石が尿管を傷つけて血尿(尿に血が混じる)が出ることもあります。痛みは背中から脇腹、さらに下腹部や鼠径部(足の付け根)へ放散し、数分〜数時間続いた後に一時おさまることもあります。しかし結石が排出されない限り再び痛みが起こる可能性があります。
腎臓の感染症である腎盂腎炎でも、脇腹から背中にかけて強い痛みが現れることがあります。この場合は高熱(38℃以上)や悪寒、頻尿・排尿痛などの症状を伴う点が結石の痛みと異なります。背中を軽く叩くと響くような痛み(肋骨背部叩打痛)があるのも特徴です。
腰・脇腹の激痛の原因
- 尿路結石(腎結石・尿管結石)
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腎臓や尿管に「石」ができて尿の通路を塞ぐ病気です。尿管に結石が詰まると腎臓内部の圧力が急上昇し、腎臓を包む膜が引き伸ばされて耐え難い激痛(疝痛)が生じます。典型的には突然発症する片側の腰背部〜脇腹の激痛で、下腹部や鼠径部、男性では陰嚢まで痛みが広がることもあります。吐き気や嘔吐、血尿を伴うことが多く、腰・脇腹の激痛の原因として最も一般的です。
- 腎盂腎炎
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膀胱からの細菌感染が腎臓まで達した状態です。高い発熱や悪寒、排尿時の痛み・頻尿などに加え、片側の背中〜脇腹に鈍い痛み(叩打痛)を生じます。尿検査で白血球や細菌が確認され、抗菌薬による治療が必要です。結石に比べると頻度は低いものの、注意すべき疾患です。
- その他の腎疾患
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まれに腎臓の腫瘍(腎がん)などが原因で脇腹の痛みが生じることがあります。腎腫瘍は進行すると慢性的な脇腹痛や血尿を呈します。
放置するとどうなる?
腰・脇腹の激痛の原因となる疾患を放置するのは大変危険です。
尿管に結石が詰まったままだと尿がうまく排出されず、腎臓の機能低下や腎盂腎炎など重篤な合併症につながる場合があります。
小さな結石でも自然に出ずに残れば腎臓へダメージを与え続ける恐れがあり、一時的に痛みが和らいでも安心はできません。感染症(腎盂腎炎)が原因の場合も、治療を怠ると細菌が全身に回って敗血症(全身的な重い感染症)に陥る危険があります。強い痛みがあるときは「治まったから大丈夫」と自己判断せず、早めに専門医を受診しましょう。
よくある質問
検査の重要性と当院での対応
原因を特定するには泌尿器科での検査が欠かせません。当院では以下のような検査で腰・脇腹痛の原因を調べます。
- 尿検査
- 尿に血液が混じっていないか、細菌感染がないかを確認します。
- 超音波検査(エコー)
- 腎臓や尿管を画像で観察します。腎臓の腫れ(水腎症)の有無や、結石らしき影が映らないかをチェックします。体への負担が少なく当院ですぐに受けられる検査です。
- CT検査
- 必要に応じて提携先でCT撮影を行います。CTは小さな結石も含め結石の位置・大きさを正確に把握できる有用な検査です。
- 腹部レントゲン(KUB)
- 腹部レントゲン写真を撮影し、レントゲンに写るタイプの結石が存在するかどうかを確認します。
検査の結果、原因疾患が判明したら速やかに適切な治療を開始します。
尿路結石であれば、まず痛みを和らげる処置(鎮痛剤の投与など)を行い、小さな結石は水分摂取や排石を促す薬で経過を見ます。
大きな結石は自然排出が難しいため、衝撃波で砕石する治療(体外衝撃波砕石術)や内視鏡手術が必要となり、専門施設へご紹介します。一方、腎盂腎炎など感染症が原因の場合は抗菌薬の投与を速やかに行い、必要に応じ入院設備のある病院と連携して対応します。
