
前立腺がんは、日本人男性で最も多く診断されるがんの一つです。国立がん研究センターの統計によると、男性のがん罹患数において前立腺がんは上位を占めています。
前立腺がんの大きな特徴は、初期にはほとんど自覚症状がないことです。症状が出たときにはすでに進行しているケースもあるため、早期発見のためには症状がなくてもPSA検査を受けることが重要です。
一方で、前立腺がんは他のがんと比べて進行が比較的ゆっくりであることが多く、早期に発見できれば治癒の可能性が高いがんでもあります。
このコラムでは、前立腺がんの基礎知識・リスク要因・検査方法・早期発見の重要性・放置した場合のリスクについて、泌尿器科専門医の視点から詳しく解説します。
前立腺がんとは
前立腺がんは、前立腺の細胞が異常に増殖してできる悪性腫瘍です。
前立腺は男性にのみ存在する臓器で、膀胱の真下・尿道を取り囲む位置にあり、精液の一部となる前立腺液を分泌しています。前立腺がんは主に前立腺の外側(辺縁領域)に発生することが多く、これが初期に排尿症状が出にくい理由の一つです。
前立腺がんは50歳を過ぎてから急激に増加し、特に60〜70代に多く見られます。高齢化と食生活の欧米化に伴い、日本でも患者数は年々増加しています。
前立腺がんのリスク要因

前立腺がんのリスクを高める要因には、以下のものがあります。
- 加齢
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最大のリスク要因は加齢です。50歳を過ぎると発症率が急上昇し、年齢とともにリスクは高まります。
- 家族歴(遺伝的要因)
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父親や兄弟に前立腺がんの方がいる場合、ご本人のリスクは約2〜3倍に上昇するとされています。家族歴のある方は、50歳よりも早い段階(40代後半)からPSA検査を受けることが推奨されます。
- 食生活
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動物性脂肪の多い食事(赤身肉、乳製品の過剰摂取)はリスクを高めるとされています。日本で前立腺がんが増加している背景に食生活の欧米化があると考えられています。一方、大豆製品(イソフラボン)やトマト(リコピン)は予防的な効果があるとの報告もあります。
- 肥満
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肥満は前立腺がんの発症リスク、特に進行した前立腺がんのリスクを高めるとされています。
- 人種
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アフリカ系の方は前立腺がんの発症率・死亡率が高いことが知られています。アジア系は比較的低いものの、生活習慣の変化に伴い増加傾向にあります。
前立腺がんの症状

- 初期症状はほぼない
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前立腺がんの初期にはほとんど自覚症状がありません。これが前立腺がんの最大の怖さです。
前立腺がんは前立腺の外側に発生することが多く、尿道を圧迫するまでに成長しないと排尿に影響が出ないためです。「症状がないから大丈夫」と思っていても、がんが進行している可能性があるのです。
- 進行した場合の症状
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がんが大きくなったり、周囲の組織に広がったりすると、以下のような症状が現れることがあります。
- 尿が出にくい(排尿困難)
- 尿の勢いが弱い
- 頻尿・夜間頻尿
- 残尿感
- 血尿・精液に血が混じる
- 排尿痛
ただし、これらの症状は前立腺肥大症でも見られるため、症状だけでは区別がつきません。
- 転移した場合の症状
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前立腺がんが骨に転移すると、腰痛や背中の痛み、骨折(病的骨折)が起こることがあります。実際に「腰が痛くて整形外科を受診したら、前立腺がんの骨転移が見つかった」というケースもあります。
前立腺がんを早期発見するために放置してはいけない理由
- 放置すると進行・転移する
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前立腺がんは比較的ゆっくり進行するタイプが多いものの、すべてがそうとは限りません。悪性度の高いタイプは急速に進行し、骨やリンパ節に転移することがあります。転移した場合、完治は難しくなり、治療の選択肢も限られます。
- 早期発見なら治癒が期待できる
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前立腺がんは早期に発見できれば、5年生存率が非常に高いがんです。限局性(前立腺内にとどまっている)の前立腺がんの5年相対生存率はほぼ100%とされています。つまり、早期発見・早期治療ができれば、前立腺がんは「治る見込みの高いがん」なのです。
- 症状がないからこそ検査が必要
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初期症状がないため、自覚症状を頼りにしていては早期発見はできません。50歳以上の男性は、年に1回のPSA検査を受けることが早期発見への最も有効な手段です。
前立腺がんの検査方法
- PSA検査(前立腺特異抗原検査)
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前立腺がんの早期発見で最も重要な検査がPSA検査です。
PSA(Prostate-Specific Antigen:前立腺特異抗原)は前立腺から分泌されるたんぱく質で、血液検査で測定します。前立腺がんがあるとPSA値が上昇するため、スクリーニング(ふるい分け)検査として広く用いられています。
- 採血のみの簡単な検査
- 数mlの採血だけで実施でき、体への負担はほとんどありません
- 基準値
- 一般的にPSA値が4.0ng/mL以上の場合、精密検査が推奨されます。年齢によって基準値を調整する場合もあります(50〜64歳では3.0ng/mL以上など)
- 注意点
- PSA値は前立腺がん以外にも、前立腺肥大症や前立腺炎、加齢でも上昇することがあるため、PSA高値=がん確定ではありません。精密検査で確認が必要です
PSA検査は多くの自治体で住民健診のオプション項目として受けることができます。当院でも受けていただけますので、お気軽にご相談ください。
- 採血のみの簡単な検査
- 直腸診(DRE)
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肛門から指を挿入し、直腸の壁越しに前立腺の大きさ・形・硬さを触診する検査です。前立腺がんがある場合、前立腺の一部に硬い結節(しこり)が触れることがあります。PSA検査と組み合わせることで、より正確なスクリーニングが可能になります。
- 超音波検査(腹部エコー)
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お腹の表面に超音波を出すプローブを当て、膀胱や前立腺の状態を観察します。前立腺の大きさや形態を確認できるほか、排尿後の残尿量の測定などにも用いられます。検査による痛みや放射線被ばくがなく、体への負担が少ない検査です。
- MRI検査
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PSA高値などで前立腺がんが疑われる場合、MRI検査(特にマルチパラメトリックMRI)で前立腺内の病変の位置や広がりを詳しく評価します。近年はMRIの精度が向上しており、生検の前に実施することが増えています。
- 前立腺生検(確定診断)
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最終的にがんかどうかを確定するのが前立腺生検です。あらかじめ撮影したMRI画像を参考にしながら、経直腸超音波検査(肛門から超音波のプローブを挿入)を行い、前立腺の位置や形態を確認しつつ、細い針を刺して組織を採取し、顕微鏡で調べます(病理検査)。
通常、前立腺の複数箇所(10〜12か所)から組織を採取します。局所麻酔で行い、日帰りまたは1泊入院で実施されることが多い検査です。
生検の結果、がん細胞が見つかった場合は「グリーソンスコア」(がんの悪性度を示す指標)が算出され、治療方針の決定に用いられます。
前立腺がんの治療法
早期に発見された前立腺がんの治療法は複数あり、がんの進行度・悪性度・年齢・全身状態を総合的に判断して選択します。
- 視療法(アクティブサーベイランス)
- 悪性度が低く進行が非常にゆっくりなタイプの場合、すぐに治療せず定期的なPSA検査・生検で経過を見守る方法
- 手術(根治的前立腺摘除術)
- 前立腺をすべて摘出する手術。近年はロボット支援手術(ダヴィンチ手術)が普及し、体への負担が軽減されている
- 放射線治療
- 体の外から放射線を照射する方法と、前立腺に放射線源を埋め込む方法(小線源治療)がある
- ホルモン療法
- 男性ホルモンの作用を抑えてがんの増殖を抑制する治療。進行がんや転移がんに対して行われることが多い
- 化学療法
- ホルモン療法が効かなくなった場合などに抗がん剤を使用
治療法の選択はがんの状態だけでなく、患者さんご本人の希望や生活スタイルも重要な要素です。泌尿器科専門医と十分に相談して決定しましょう。
いつから検査を受けるべき?
- 50歳以上の男性は年1回のPSA検査を
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症状がなくても、50歳以上の男性は年に1回のPSA検査を受けることをおすすめします。採血だけの簡単な検査で、前立腺がんの早期発見に最も有効な手段です。
- 家族歴がある方は40代後半から
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父親や兄弟に前立腺がんの方がいる場合は、40代後半からPSA検査を受けることが推奨されています。
- 以下の症状がある場合は早めの受診を
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- 尿が出にくい、尿の勢いが弱い
- 頻尿、夜間頻尿が続く
- 血尿、精液に血が混じる
- 原因不明の腰痛や背部痛が続く
これらの症状は前立腺肥大症などでも見られますが、前立腺がんの可能性を除外するためにも泌尿器科の受診をおすすめします。
よくある質問
前立腺がんの早期発見のために
前立腺がんは「症状が出にくい」がんだからこそ、定期的な検査による早期発見が極めて重要です。早期に見つかれば治癒の可能性が非常に高く、治療の選択肢も豊富です。
まゆみ泌尿器科内科クリニック(東武アーバンパークライン岩槻駅 徒歩1分)では、PSA検査をはじめとする前立腺がんのスクリーニングに対応しております。
「50歳を過ぎたけれど、まだ一度も検査を受けたことがない」という方や、「PSAが高いと言われたけれど、どうしたらいいかわからない」という方も、どうぞお気軽にご相談ください。
